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2021/09/15 18:21:39

業種別企業ネットワークの動向

▼1. はじめに

ネットワークの仕事を30年近くやってきましたが、今まで関わってきた各業界の企業ネットワークを振り返り、業界特有のネットワークの特徴や、今後の企業ネットワークの動向について自分なりの考えを記載したいと思います。

▼2. 業界による企業ネットワークの違い

今まで、流通系企業、金融系企業(銀行)、証券系企業のネットワークの構築、維持管理業務を経験してきました。業務を通じて感じた各業界のネットワークおよびサーバを含めた基盤の特徴を以下に示します。



流通系では、とにかく安く、早くシステムを構築することが求められる傾向があります。それゆえ、新しい技術やクラウド基盤の採用にも積極的です。
金融系(特に銀行)では、流通とは逆により時間をかけてコストがかかってでも堅牢なシステムが求められます。そのため、新しい技術には消極的で、未だにメインフレーム(大型汎用機)を基幹システムに使っている大手銀行もあります。
証券系は、金融系に近いのですが、大きな違いとして低遅延(低レイテンシ)のシステムが求められるという点です。これは証券業界特有の理由なのですが、株式売買のルールは基本早い者勝ちのため、証券投資家(トレーダー)は株価が安い時に株を購入し、高い時に売りさばいて利益を出します。
例えば、銀行ATMでお金を引き出す時、2台並んでいるATMで2人の利用者が同時に操作して、左側の利用者の方が右側の人よりお金が出てくるのが1秒遅くてもあまり問題になりませんが、証券の売買では同じタイミングで操作したら同じレスポンスで処理をしないとビジネス上不公平になってしまいます。
実際にアメリカでは1ミリ秒(1000分の1秒)早く処理をするために、証券取引所まで光回線を独自に敷設したという話があります。この実話は「ハミングバード・プロジェクト」という映画になっています。

▼3. クラウドの採用

業界を問わず導入が進んでいるのが大手クラウドベンダーの提供するクラウドサービス(パブリッククラウド)です。
どの業界でもトラフィックのピーク時に合わせてシステム基盤を用意しておくのはコスト増になるため、通常運用時に必要なシステム基盤を準備するのが一般的です。ピークの時だけシステムを増強できれば良いのですが、オンプレミスの場合はサーバを1台増強するのにも時間もコストもかかりますし、そもそもピーク時にどのくらいトラフィックが多くなるか(どのくらい設備を増強すればよいか)予測するのは非常に難しい問題です。
その点、クラウドサービスであれば必要な時にだけサーバリソース(仮想サーバ)を追加でき、ピークが過ぎたらサーバリソースを開放すれば良く、その基盤運用もクラウドベンダーに委託できるので非常にニーズにマッチしたサービスです。
そのため、ピーク時のトラフィックが読みづらい流通系だけでなく、金融系や証券系でもユーザへのサービス提供部分での利用が進んでいます。

▼4. 今後の企業ネットワーク

クラウドの良い点を記載しましたが、業務の基盤の運用をクラウドベンダーに丸投げすることになることから、クラウド側で障害が発生した場合に自分たちでは何もできないという問題もあります。
そのため、企業の重要な基幹システムはオンプレミスで構築/運用し、それ以外の情報提供型のサービス系システムはクラウドで構築/運用するといった具合に、適切なバランスでサービスを使い分けてシステムを構築する必要があると思います。
障害を考慮してシステムを二重三重にしたとしても、オンプレミスでもクラウドサービスでも障害で業務システムが停止してしまうことは必ずあります。

先日の9月2日にAWSで大規模な障害が発生し、多くの企業で業務影響が発生したことが大きなニュースになりましたが、2020年6月25日にはセブンイレブンの全店舗でバーコード決済やセブン銀行のATM等が5時間近く利用できない障害が発生しました。原因はベンダーによる作業ミス(設定ミス)で、データセンターと店舗を接続するネットワークが利用できなくなったためでした。

どのようなサービスを使っても、最終的に人間がシステムを運用することは変わらないため、人間はミスをすることを前提にシステムを設計し、障害発生時に迅速にリカバリーできる仕組みを構築することが今後更に重要になると思います。


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